集いを歓びに

Vol.2 真鍋真さんインタビュー

去る8月14, 15, 16日、東京国際フォーラムが子供たちの集う巨大な「学校」と化しました。丸の内キッズジャンボリー2012は、科学、芸術、スポーツといったさまざまなジャンルにおいて、子供たちに未知の体験をしてもらう企画。学校で学べないことを学べる「ワンダーキャンパス」で、恐竜の化石調査の楽しさ・奥深さをご紹介して下さったのは、恐竜博士の真鍋真さん。真鍋さんが、子供たちに伝えたかったメッセージを伺いました。

■裾野の広い「恐竜学」

 この夏のキッズジャンボリーでは、僕の「ワンダーキャンパス」の授業にもたくさんの子供たちが集まってくれました。テーマは「恐竜時代にタイムとラベル~化石ハンターと恐竜ハカセの好奇心~」。対象は小学校4年生から中学生までということでしたが、始まる前に会場の様子を見ると、小さなお子さんが多いのに驚きました! とはいえ、恐竜のことが大好きで、大人よりも知識があるお子さんは多い。その意味では僕も子供たちも、恐竜が好きな人同士ですから、授業はあえて子供向けを意識することなく、しっかりとした内容をお伝えしようと思いました。
 僕が「恐竜学」と呼んでいる分野は、普通の生物学的なアプローチに留まらず、恐竜のアニメやフィギュア、アートの活動も含みます。化石を集めるのが好きな人もいれば、それを描くのが得意な人もいる。とても裾野が広い分野です。
 今回は恐竜の骨格を組み立てるペーパークラフト作りに子供たちが挑戦しました。簡単すぎず、ある程度の達成感を感じてもらえるようなものを用意して、東大と学芸大学の院生にインストラクターを勤めてもらいました。子供たちの年齢に幅がありましたし、ああいったものを作り慣れてる子と、そうではない子がいるので、少し時間はかかりましたが、最後は全員仕上げることができたので、よかったなと思っています。

■研究者、化石ハンター、化石プレパレーターの三者が協力

 メインとなる授業では、恐竜を学問的に研究している僕だけでなく、「化石ハンター」として、数々の珍しい化石を発見し、アマチュアながら多大な貢献をされている大倉正敏さん、掘り出した化石をきれいにクリーニングするという特殊技能をもった「化石プレパレーター」の脇本晃美さん、そして若手研究員の松本涼子さんに加わっていただき、それぞれの現場で行う作業の様子や発見できたこと、どうして恐竜や化石に興味を持つようになったのか、どんなところに魅力があるかを語ってもらいました。
 研究者だけでなく、アマチュアであっても情熱をもって活動している方々がいます。9時から5時までの仕事時間以外は、化石の発掘に出かけ、調査に没頭されています。研究室にこもる時間の長い僕らとは場数が違いますし、研究者が敵わない部分もあります。また掘り出されたばかりの化石をきれいにクリーニングしてくれる役割の人がいなければ、綿密な研究はままなりません。彼らの活動が僕らの研究を支えてくれているのです。
 アマチュアも専門家も、化石が好きな者同士であることに変わりはなく、お互いに交流し、情報をキャッチボールのように交換しあえば、大きな発見や新しいものが生まれます。人と人とが交流し合えることも、この分野の楽しみの一つです。
 一昔前までは、恐竜というとなんとなく男の子が没頭する世界のようなイメージがありました。しかし昨今では、恐竜が可愛い・カッコいいとか、生物の進化の過程がわかって楽しいなど、さまざまな興味を抱いて、老若男女、アマチュア・専門家問わず、多くの人が関心を寄せています。今回のキッズジャンボリーでも、脇本さんと松本さんという二人の女性のお手本に登壇してもらいました。彼女たちに続く女の子たちがいることを願います。

■人と集うことの歓びとは

 伝記が残されているような偉人たちは、特別な才能を持った人たちのように思われるかもしれません。しかし、彼らはいいタイミングでいい人たちとの出会いがあったからこそ、素晴らしいことを思いついたり発見できたのです。ちょっとした差で、もしかすると単に「変な人」と思われたかもしれません。ですから、閉じこもっているだけではだめですし、自分だけが勉強すればいいわけじゃありません。人同士が集い、互いにキャッチボールをすることで、刺激し合い、学問全体も進歩していきます。分野にとらわれず、先輩・後輩といった垣根も作ることなく、人と人とが交流すると、新しい種が巻かれ芽が出るのです。人と集い、出会うことでしか得られないチャンスがそこにあると思います。

(取材・構成:飯田有抄)

プロフィール

真鍋真さん
1959年東京都生まれ。1994年イギリス・ブリストル大学理学部地球科学科で博士号を取得。現在、国立科学博物館地学研究部研究主幹。古脊椎動物学(爬虫類、鳥類化石)研究。恐竜など中生代の化石から読み解く爬虫類、鳥類の進化を研究している。著書に『日本恐竜探検隊』(岩波ジュニア新書、共著)などがある。

写真:赤崎広志

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